斉藤ナミ

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私はいつまでかわいそうな主人公でいるのか

誰にだって辛い過去の一つや二つはある。私にもある。貧乏、宗教2世、一家離散、強迫性障害。どれをとっても苦しい経験だったことは間違いない。問題はそれをどれだけ引きずるのか。いつまで「悲惨な星のもとに生まれ、次々に与えられし試練を乗り越え頑張ってきた伝説の主人公」という設定に酔っているのか。困難に耐えることがデフォルトで、問題が起きても根本の原因からひたすら目を逸らし続け、”耐える”で思考停止している。立ち向かえバカ。「辛い経験も悪くない。だって傷ついた分、他人の傷みがわ

うしろめたさを味わいに、1人で高級ランチを食べに行く

ある夜、私は夫に届いた牛タンを勝手に食べた。お歳暮にいただいた高級厚切り牛タンスモークだ。子どもたちが寝たあと、その欲望はやってきた。お腹すいたな…。たしか、お歳暮に牛タン届いてたな…? あぁ、牛タンスモークめちゃめちゃ食べたいな…今ものすごく牛タンの気分だよ仕事で家におらず、冷蔵庫なんてそうそう覗かない夫は、まさか牛タンスモークが今この家にあるなんてつゆ程にも思っていないだろう。今、こっそり食べちゃおうかな?いやいや、そんなの勝手に開けて食べていいわけがな

行き止まりのニュージーランド

私は卑怯で強欲な人間だ。小さい頃から全てを自分の思い通りにしたいと思っていた。5歳の頃、近所の大富豪の息子、ダイちゃん(5歳)が持っていたライオンの腕時計がどうしても欲しかった。彼は私のことを好きで「大きくなったらナミちゃんと結婚したい」といつも言ってくれていた。嬉しいな、と思いつつも私はその立場を利用して「その時計をちょうだい?くれなきゃ結婚してあげないよ?」と脅し、まんまと時計を手に入れた。エピソード内の可愛らしさと酷さの落差がすごい。ボロい賃貸に住む貧乏人の

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