やってみて知った手削りの難しさ! 初めてのマイかき氷は重さと温度との戦い️

2024-07-29 #てさぐり部

かき氷ブームを|黎明《れいめい》期から支える「ひみつ堂」、試行錯誤して独自の世界観を切り開いた「サカノウエカフェ」、それぞれの店主に“自分らしいかき氷作りとはなにか?”との疑問をぶつけたライター。二人のかき氷の賢人の教えを胸に、オリジナルかき氷作りに挑戦!!


プロ御用達の純氷を街の氷屋さんで調達!

冷凍室でいい笑顔を見せてくれた外口さん

まず、かき氷に欠かせない氷を調達。プロ御用達の本格的な純氷(純氷については第2回の記事を参照)を使いたい。そこで、東京・目白区の鬼子母神堂西参道近くで昭和10年から氷店を営む「|外口氷室《そとぐちひょうしつ》」へ。第1回で紹介した目白の「志むら」にも卸している。
 
こうした街の“氷屋さん”の氷は、実は一般人でも気軽に買えることが多い。最近ではネットで注文することも可能だが、今回はせっかくなので、直接足を運んで話を伺うことに。
 
暑い中、出迎えてくれたのは、2代目の|外口文祥《そとぐちのりよし》さん。外口さん、家庭用の氷と業務用の氷の違いってなんですか?
 
「まず、凍らせるのにかかる時間が違いますね。うちで販売している純氷は、マイナス12度の低温で60時間以上かけて凍らせています。氷は不純物のない部分から凍っていく特徴があり、じっくり凍らせながら途中で不純物を取り除くことで、透明な氷を作ることができるからです。家庭用冷凍庫の製氷器で作る氷は、短時間で凍らせるため、不純物も含んだ状態で一気に凍ってしまいます。だから見た目も白っぽく濁ってしまうんです」
 
手間ひまかけて凍らせた純氷は、氷の向こう側が見えるほど透明。溶けにくく、不純物が混じっていないため、飲み物や食べ物の味にも影響しにくいという。だから飲食店はもちろん、一般の方からも「一度使ったら普通の氷に戻れない」と好評だそう。
 
インタビュー中にいただいた麦茶にも純氷が使われていたが、飲み終わっても氷はあまり溶けずに残っていたし、心なしか麦茶もおいしく感じた。
 
一貫目分(3.75kg)の氷を購入。外口さんが、大きな氷の塊から電動ノコギリでカットしてくれた。なんと値段は400円! 某コンビニでは、ロックアイスが1.1kgで税込278円だ。え、外口さん安すぎませんか?

わざわざ冷凍庫からカットする前の氷を取り出してくれた
巨大な電動ノコギリで豪快にカット
切り出してくれた一貫目分の氷。
かき氷機にセットするのは半貫目分なので、真ん中に切れ目を入れてくれた

とりあえず削ってみるも、うまくいかず……

氷が業務用ならかき氷機も業務用に! ということで、ネットでレンタルしたのは、第2回で取り上げたひみつ堂で使われているのと同じ手回し式。送料込みで1万円しなかった。この夏、地域のお祭りやキャンプで借りてみてもいいのでは。
 
ここでひみつ堂店主・森西さんに言われたことを思い出す。氷は室温に少しさらして、柔らかくしてから削るのがいいんだっけ。実際、そのとおりにやってみるが……。
 
うーん、ひみつ堂で見た“かつお節のように薄くて雪のように白い氷”ではない。食べてみても、シャリシャリとした硬い食感が残っていて、口溶けもよくない……。

ひみつ堂で見たのと全然違う! ただの“細かく砕いた氷”という感じ
ライターは、一口食べてこの表情。氷の食感が残りすぎている

刃の角度がよくないのだろうか。浅い角度で刃が当たるように調整してみる。回すスピードも素早く一定を心がけてみた。お! 今度はなんかいい感じ。お店で見たような薄くて白い氷になっているぞ。

刃の角度を微調整し、なんとか成功! さらさらした真っ白な氷になっている

比較のために、家庭用冷凍庫の氷を家庭用かき氷機でつくったかき氷も準備。見た目は純氷&業務用かき氷機の方がふんわりとしている。食べ比べてみても口溶けが全然違う!

左が業務用、右が家庭用。見た目からして明らかに違う!

コーヒーが主役のかき氷作りに挑戦!

いよいよ味の要となる、シロップ作りに取り掛かる。味はコーヒー。ここにいたるまでさまざまな店のかき氷を食べたが、意外にもコーヒー味を全面に出したかき氷は少なかった。そして偶然にもライターは農園ごとの個性が感じられるシングルオリジンコーヒーにハマって1年。大好きな銘柄のコーヒーの味をかき氷でも楽しめたら面白いのでは? ということで発想したのだ。
 
主役のコーヒーシロップには、ベリー系のジューシーな果実味が特徴の「エチオピア イルガチェフェ ゲデブ ウォルカ ナチュラル」という豆を使用。ライターが大好きなコーヒーショップで購入したものだ。コーヒー豆の個性が出やすい浅煎りにし、ハンドミルで丁寧に|手挽《てび》きして、ドリップで抽出する。

自宅から持ってきたコーヒーセットで、コーヒーを|淹《い》れていく

トッピング用のコーヒーゼリーには、深煎りのコクあるブレンド豆を使用。こちらもドリップして、自宅で固めてきた。
 
そこに、お好みでオレンジソースをかけるという構成。コーヒーとオレンジって合うの? と思うかもしれないが、最近人気のライムコーヒーをイメージしてみた。コーヒーのほろ苦さとライムの酸っぱさが意外と合う。サカノウエカフェの町山さんに第3回で教わったフードペアリングを意識して考案した。
 
さらに、町山さんから「ベースとしてミルクシロップをかけると氷がふんわりするよ」と教わったので、それも牛乳と練乳を使って手作りすることに。彩りとコクのためにホイップクリームも準備。

かき氷に載せる生クリームは八分立てがいいと町山さんに教えてもらった

コーヒーシロップ、ミルクシロップ、オレンジソース、ホイップクリームをすべて手作りするのは大変! それらに1時間もかかってしまった。
 
さあ、全ての材料の準備が整ったところで、いよいよ盛り付け! 取材した店では、氷と氷の間にたくさんトッピングを挟み込んでいた。食べ飽きないようにという工夫だろう。真似して、ホイップクリームとコーヒーゼリーを氷の間に忍ばせてみた。

削り方のコツをちょっとだけつかんだ!
ミルクシロップをかけた氷の間にコーヒーゼリーを忍ばせる
コーヒーシロップをかけていく。浅煎りを使ったので、思ったより黒くならなかった

さらに上からも、ミルクシロップとコーヒーシロップ、そしてホイップクリームをたっぷり──すると、重さでかき氷が崩壊! ああ、サカノウエカフェの町山さんに「重さに気をつけて」と言われていたのに! 欲張りすぎた……!

トッピングの重さで、このあと悲惨な状態に!

しかも室温が高いせいか、下からもどんどん溶けて崩れていく。急いで仕上げのトッピングのコーヒーゼリーとクッキーを載せて、なんとか完成!

あんなにあった氷がみるみる溶けていき、トッピングのクッキーも崩れ落ちて……。
盛り付けが一番難しかった!

はたしてお味は?……お! コーヒーの味が際立っている! 浅煎りを使ったシロップはコーヒー豆独特のフルーティーな酸味、深煎りを使ったコーヒーゼリーはほろ苦さと、それぞれの違いが感じられる。
 
生クリームの甘さもいいアクセント。オレンジソースをかけるとたちまち味変! チョコレート菓子のオランジェットのような品のある味わいに。これは予想外だった。
 
編集いからしも「繊細な酸味があって、コーヒー自体の|美味《おい》しさがめちゃくちゃ伝わってくる」と絶賛。自分が選んだ素材の美味しさを他人に感じてもらえるのってこんなに嬉しいんだ。
 
しかし、コーヒーゼリーは苦すぎた。今度は浅煎りの酸味のあるコーヒーで作ってみようって、リベンジする気マンマンじゃん、私!
 
自分で味の組み合わせを考えて、手間ひまかけて準備して、手を動かして作ってみたことで、かき氷作りの大変さをすこしだけ体感できた。何かを極めるって本当にすごいことだ。そんなプロへの敬意を込めて、今年の夏はたくさんかき氷専門店を巡ろう!

2回目の盛り付けはなんとかうまくいった!
努力の結晶を手にニッコリのライター

番外編:憧れの丸氷作り! 結果は?

「せっかくいい氷があるんだから」とお酒大好きの編集いからしが丸氷作りに挑戦! YouTubeで作り方を学んできたそう。アイスピックまで自腹で購入してきた。
 
まずは残った半貫目の氷を、グラスに入る大きさまで包丁で削り出す。しかし|上手《うま》くいかない。手もかじかんでくる。「冷たい! 冷たい!」と連呼。こりゃ、予想以上に大変そうだ。

|苦悶《くもん》の表情を浮かべる編集いからし
10分程度の格闘の末、だいぶ小さくなってきた!

ようやくグラスに入りそうなサイズになったところで、今度はアイスピックを使って角をとっていく。時間がたって氷が柔らかくなったせいか、順調に氷が丸くなっていく。

バランスを見ながら、削っていく。飛び散る氷の破片がダイナミック!

ある程度丸くなったら一度水で洗い流す。そうすることで表面が滑らかになるのだ。お、いい感じ。グラスにいれて、ウィスキー……ではなく麦茶を注いでみる。

水で洗うだけでとても滑らかに!
麦茶を注いでみる。氷はちょっと小さいけど、高級感が出るから不思議だ

番外編の丸氷作りも大成功! 「いい氷を使って|贅沢《ぜいたく》な経験をすることができた」と編集いからしもご満悦だった。


オー!マイかき氷|#てさぐり部|note 調べれば調べるほど、最新のかき氷のバリエーションの豊かさには驚くばかり。かき氷はデザートの枠を超え、一つの料理として楽しむ note.com
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クレジット

文:古澤椋子
編集:いからしひろき(きいてかく合同会社
撮影:蔦野裕
校正:月鈴子
取材協力:外口氷室
制作協力:富士珈機

ライター・古澤椋子 https://twitter.com/k_ar0202
1993年生まれ、東京都板橋区出身。水産系の社団法人、ベンチャー企業を経て、2023年よりフリーライターとして活動開始。映画やドラマのコラム、農業系イベントの取材、女性キャリアに関するSEO、飲食店取材など幅広く執筆。在宅ワーク中心で、運動不足なことが課題。

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