東京創元社2024年復刊フェア・全作品紹介[2024年9月下旬開催]
2024-09-19 Web東京創元社マガジン
東京創元社では品切れ中の文庫作品を対象として、毎年秋に《復刊フェア》を開催しています。
2024年9月下旬よりおこなわれる本年度の復刊作品は全部で8点となります(本記事では70周年フェアでの復刊作品2点とあわせた全10点を紹介します)。書影、内容紹介をそろえましたので、ご購入の参考にどうぞ。
※実店舗・ネット書店を問わず、実際に購入できるのは9月下旬以降となります。70周年フェアの復刊作品2点は発売中です。
ミステリ(6作品)
『レディに捧げる殺人物語』フランシス・アイルズ/鮎川信夫訳【新カバー】
三つ子の魂百までという。リナは自分の性格を変えることができなかった。決定を先送りすること、思い込みで|糊塗《こと》すること。崩壊の足音は遠く近く響いていたのに。八年に及ぶ結婚生活の果て、夫ジョニーの真実に気づいたそのとき……。人間の不可解な|性《さが》と、その内心の葛藤。ヒッチコック『断崖』の原作としても知られる、アイルズ=バークリーの傑作犯罪心理小説。(別題『犯行以前』)解説=中島河太郎
『この町の誰かが』ヒラリー・ウォー/法村里絵訳【新カバー】
クロックフォード――どこにでもありそうな平和で平凡な町。だが、ひとりの少女が殺されたとき、この町の知られざる素顔があらわになる。怒りと悲しみ、疑惑と中傷に焦燥する捜査班。だが、局面を一転させる手がかりはすでに目の前に……! 警察小説の巨匠がドキュメンタリー・タッチで描き出す《アメリカの悲劇》の構図。MWAグランドマスター賞受賞第一作。解説=若竹七海
『フレンチ警部の多忙な休暇』F・W・クロフツ/中村能三訳【新カバー】
旅行社の社員ハリー・モリソンは、ある男から豪華船を用いたイギリス列島巡航の事業計画を聞かされ、協力を申し出る。紆余曲折の末、賭博室を設けた観光船エレニーク号がアイルランド沿岸の名所巡りを開始した。だが穏やかな航海は、モリソンが船主の死体を発見したことで終わり、事件捜査にフレンチ首席警部が名乗りをあげる。アリバイトリックの妙で読者を唸らせる傑作長編。ノート=厚木淳
『死体をどうぞ』ドロシー・L・セイヤーズ/浅羽莢子訳【新カバー】
探偵作家のハリエットは、波打ち際に|聳《そび》える岩の上で、喉を掻き切られた男の死体を発見した。そばには剃刀。見渡す限り、浜には一筋の足跡しか|印《しる》されていない。やがて、満潮に乗って死体は海に消えるが……? さしものピーター卿も途方に暮れる怪事件。本書は、探偵小説としての構成において、シリーズ一、二を争う雄編であり、遊戯精神においても卓越した輝きを誇る大作である。解説=法月綸太郎
『煙で描いた肖像画』ビル・S・バリンジャー/矢口誠訳【新カバー】
ある日、偶然に見つけた思い出の少女の写真。彼女は今どうしているのだろうか? そのちょっとした好奇心はいつしか憑かれたような思いに変わり、ダニーはわずかな手掛かりを追って彼女の足跡を辿り始める。この青年の物語と交互に語られていくのは、ある悪女の物語。二人の軌跡が交わるとき、どんな運命が待ち受けているのだろうか? サスペンスの魔術師の代表作がついに登場。解説=小森収
『検死審問-インクエスト-』パーシヴァル・ワイルド/越前敏弥訳
リー・スローカム閣下が検死官としてはじめて担当することになったのは、女流作家ミセス・ベネットの屋敷で起きた死亡事件だった。女主人の誕生日を祝うために集まっていた、個性的な関係者の証言から明らかになる事件の真相とは? そして、検死官と陪審員が下した評決は? 全編が検死審問の記録からなるユニークな構成が際立つ本書は、江戸川乱歩が絶賛し、探偵小説ぎらいのチャンドラーをも魅了した才人ワイルドの代表作である。解説=杉江松恋
怪奇幻想(1+2作品)
『淑やかな悪夢 英米女流怪談集』シンシア・アスキス他/倉阪鬼一郎・南條竹則・西崎憲編訳
神経の不調に悩む女にあてがわれた古い子供部屋。そこには、異様な模様の壁紙が貼られていた……。“書かれるべきではなかった、読む者の正気を失わせる小説”と評された、狂気と超自然の|間《あわい》に滲み出る恐怖「黄色い壁紙」ほか、デモーニッシュな読後感に震撼すること必至の「宿無しサンディ」等、英米の淑女たちが練達の手で織りなす、本邦初訳の恐怖譚12篇を収めた一冊、文庫化。訳者鼎談=倉阪鬼一郎・南條竹則・西崎憲
『我らが影の声』ジョナサン・キャロル/浅羽莢子訳【新カバー】
【4月開催フェア復刊◎澤村伊智推薦】聞け。幸福な日々と偽りの自分が、静かに確実に崩れ落ちる音を。
兄が死んだのは、ぼくが十三のときだった。線路を渡ろうとして転び、第三軌条に触れて感電死したのだ。いや、それは嘘、ほんとはぼくが……。ぼくは今、ウィーンで作家活動をしている。映画狂のすてきな夫婦とも知り合い、毎日が楽しくてしかたない。兄のことも遠い昔の話になった。それなのに――キャロルの作品中、最も恐ろしい結末。決して誰にも、結末を明かさないで下さい。
『ゴースト・ハント』H・R・ウェイクフィールド/鈴木克昌他訳
【7月開催フェア復刊◎月村了衛推薦】正統派英国怪奇小説、最後の昏き光輝の書。深夜の書斎で恐怖の読書に戦き給え。
幽霊屋敷訪問の様子を実況するラジオ番組のリポーターが訪れたのは、30人にも及ぶ自殺者を出したという異様な来歴を秘めた邸宅だった……。極限の恐怖を凝縮した代表作「ゴースト・ハント」他、瀟洒な|田舎の別荘《カントリー・ハウス》の怪異譚「暗黒の場所」など本邦初訳作5篇を含む、正統的な英国怪奇小説最後の書き手と謳われる名手・ウェイクフィールドの逸品18篇を集成した、初の文庫版傑作選。訳者解説=鈴木克昌
SF(1作品)
『時間泥棒』ジェイムズ・P・ホーガン/小隅黎訳
ニューヨークじゅうで時間が狂いはじめた。時計がどんどん遅れていくのだ。しかも場所ごとで遅れ方が違う。この異常事態に、著名な物理学者が言うには「異次元世界のエイリアンが我々の時間を少しずつ盗んでいるのです」!? エイリアンだか何だか知らないが、時間がなくなっていくのは本当だ。大騒動の顛末は? 巨匠が贈る時間SFの新機軸! 訳者あとがき=小隅黎
※実店舗・ネット書店を問わず、実際に購入できるのは9月下旬以降となります。70周年フェアの復刊作品2点は発売中です。