プロ野球選手の代理人 弁護士限定は独禁法違反のおそれ 公取委

2024-09-20 いしまる

公正取引委員会によりますと、プロ野球12球団などで構成される「日本プロフェッショナル野球組織」は球団に対し、選手の契約交渉の代理人について弁護士に限定したうえで、すでにほかの選手の代理人になっている人物を選べないようにさせていたということです。

このルールは2000年に代理人制度が導入された際に、プロ野球組織側が球団と選手会に求めた条件で、公正取引委員会は球団の活動を不当に制限し、独占禁止法に違反するおそれがあるとして19日、プロ野球組織に警告し再発防止を求めました。

ルールによって、選手は日本の弁護士資格を持たない海外の代理人との契約ができないなどのケースがあったとみられるということです。

公正取引委員会がプロ野球組織に対し、警告を出すのは初めてです。

プロ野球組織は今月2日、このルールを早期に取りやめることを決定し、今シーズンオフ以降の契約交渉から見直す方向だということです。

公正取引委員会は、スポーツ選手の契約などをめぐり独占禁止法違反の状況にないか幅広い競技で実態の把握を行っていて、19日の会見で「今後も独占禁止法に違反するような疑いのある行為に接した場合は厳正に対処する」と述べました。

プロ野球の代理人交渉とは

プロ野球の選手の契約更改で導入されている代理人交渉とは、選手が弁護士資格を持った専門家に年俸の交渉などを委託するものです。

プロ野球では、契約更改の交渉は選手本人が行うことが慣例となっていましたが、日本プロ野球選手会が代理人による交渉を認めるよう長年にわたって球団経営側に求めてきて、2000年のシーズンオフの契約更改から導入されました。

その年のオフに当時、日本ハムに所属していた下柳剛さんが初めて代理人交渉を行うと、当時の選手会で会長を務めた古田敦也さんなどもその制度を利用しました。

一方で日本プロ野球選手会によりますと、代理人交渉については球団側が1人の代理人が複数の選手と契約することを認めず、日弁連=日本弁護士連合会所属の日本人弁護士に限るなどの条件をつけているということです。

これらについて選手会では、以前から変更や改善を求めていました。

まず、1人の代理人が複数の選手と契約できないことについては、日本では代理人交渉の経験や実績を持つ弁護士が少ないことから、1人が選手1人しか担当できないと多くの選手の代理人選択の自由が限られてしまうとして、制度を導入した意義が失われかねないと指摘しています。

また、日弁連所属の日本人弁護士に限られていることについては、外国人選手の場合は弁護士以外の代理人が日本の球団と交渉するケースもあることや、日本選手が大リーグからプロ野球に復帰する場合も、大リーグの選手会公認の代理人が交渉している実情があることから、日本の選手会が公認している代理人なら球団との交渉が行えるよう求めています。

有識者会議が2018年に違法性指摘 公取が実態把握進める

スポーツの分野をめぐっては公正取引委員会の有識者会議「人材と競争政策に関する検討会」が2018年にまとめた報告書で、プロ野球組織など事業者団体が取引条件を決定することは「競争を制限することを目的としたものであり競争に及ぼす悪影響が極めて大きく、原則として違法だ」などとして独占禁止法に違反する場合があるという考え方を示しました。

これ以降、公正取引委員会はスポーツ選手の契約などをめぐり、独占禁止法違反の状況にないか幅広い競技で実態の把握を進め、ラグビーやバレーボール、陸上などで移籍制限のルールを見直す動きが続いています。

プロ野球では、2020年にドラフト会議での指名を拒否して海外の球団と契約した選手が日本に戻ったあと一定期間はプロ野球の球団と契約できない、いわゆる「田澤ルール」について、公正取引委員会が独占禁止法違反の疑いがあるとして調査を行い、ルールは調査中に撤廃されました。

今季オフから代理人の制限に関する申し合わせ撤廃へ

公正取引委員会から警告を受けたことについて、日本プロフェッショナル野球組織の井原敦コミッショナー事務局長は今シーズンのオフから代理人の制限に関する12球団の申し合わせを撤廃し「各球団ごとに適切に判断して契約交渉に臨むことになる」と明らかにしました。

井原コミッショナー事務局長によりますと、代理人の制限は2000年に代理人交渉が導入された際に12球団の間で申し合わせたということですが、先月8日に公正取引委員会から調査を受け、今月2日に行われた12球団の代表者が集まる実行委員会で話し合った結果、この申し合わせを撤廃することを決めたということです。

その上で「申し合わせができてから20年以上たち、スポーツ競技の社会情勢の変化も踏まえて、今回の調査をきっかけに撤廃することを決めた。今後は法令を順守し、各球団が適切に判断して選手契約に臨むことになる」と話しました。

一方で、これまで代理人を弁護士と限定していたことについては「契約交渉の多くは法律事務にあたり弁護士以外が取り扱うと弁護士法に違反するおそれがあるので処分対象となる選手を守るために取り入れた」などと説明しました。

選手会「公正取引委員会による処分を歓迎」

日本プロ野球選手会の森忠仁事務局長は、公正取引委員会が警告を出したことについて「選手会としては選手が代理人を自由に選択しやすくするため、規制の見直しを求めてきたところであり、公正取引委員会による今回の処分を歓迎しています」と評価するコメントを出しました。

また、代理人制度の導入から20年以上たった中でも制度自体が広まっていないなどと指摘した上で「選手が代理人を使いやすくなるような取り組みを進めていくとともに健全な代理人制度のあり方について協議を行っていく所存です」としています。

そして「野球界には代理人制度のほかにも、独占禁止法に照らして疑義のある制度が複数存在しますので、球団と選手は対等であるべきとの理念のもと、フェアなルール作りに向けて活動していきます」との考えを示しました。

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。
      SiteMap   サイト概要