全員で辿り着いた《叶うはずないあの日の夢》の大舞台。UVERworld、初の日産スタジアム公演2デイズを振り返る。

2023-08-03 松本 侃士

【7/29(土)〜30(日) UVERworld @ 日産スタジアム】

全ては、今から半年以上前、2022年12月21日に敢行された横浜アリーナ公演「TAKUYA∞生誕祭」から始まった。その日の公演においては、あらかじめライブの最後に重大発表があることが明かされており、そしてその予告通り、2023年7月に初となる日産スタジアム公演を2日間にわたり行うことが発表された。バンド史上最大規模の会場でのワンマンライブ、しかも2日目は男性限定ライブ「男祭り」としての開催である。まさに、前人未到の景色を切り開くための新たなる挑戦だ。

UVERworldのバンド史において、そして日本のロック史において、この2日間は絶対に歴史的なライブになる。この報せを横浜アリーナの会場で受けた時、僕はすぐにそう予感した。そして、その発表から半年以上かけてボルテージを高め続けていくメンバー6人の姿を見ながら、その予感は日を重ねるごとに深い確信へと変わっていった。そして当日の2日間を通して、その確信は見事に現実のものとなった。


1日目、7月29日。ライブ序盤、TAKUYA∞は、「UVERworldの歴史的最高の日」にすることを高らかに宣言した。"ナノ・セカンド"、"7th Trigger"、そして"CORE PRIDE"。次々と容赦なく放たれていく渾身のロックアンセムの数々。それぞれの楽曲のイントロが鳴るたびに巻き起こる怒涛の大歓声、大合唱、特大コール&レスポンス。それは、これまでも彼らのライブの場で数え切れないほど観てきた光景ではあるが、やはり72,000人の観客が集った日産スタジアム公演における熱量とスケールは凄まじいものだった。メンバー6人と72,000人の観客が、音楽を通して真っ向からぶつかり合うような熱烈なコミュニケーションを重ねながら、同時に、お互いに手を取り合い自分たちの限界を共に更新し続けていくような熱い連帯感が会場全体に満ちていた。メンバー6人だけではなく、あの場に集まった全員で一つの景色を切り開いていく。そうした輝かしい一体感を何度も感じ取るたびに、どうしようもないほどに胸が熱くなった。

「UVERworldが? 日産スタジアム2デイズ? しかも2日目、『男祭り』? できるわけがない。」「成功した途端、手のひらを返す者たちに告ぐ、俺たちがNO.1」その言葉と共に披露された"NO.1"は、2010年、初の東京ドーム公演を見据えてリリースされた楽曲である。その後もこの曲は、昂る反骨精神を胸に何度もブレイクスルーを重ね続けるUVERworldにとっての渾身の代表曲としていつまでも堂々たる輝きを放ち続けている。リリースから13年、新たな到達点・日産スタジアムで打ち鳴らされる同曲は、いつも以上に鮮烈な響きを轟かせているように思えて強く心を動かされた。

また、初期のキャリアを代表する1曲"CHANCE!"が、今回の日産スタジアムで披露されたことも、あまりにも感動的な一幕であった。

叶うはずないあの日の夢が
未だに胸の中瞬くから
いつだって時は最初まで戻れる
あきらめないで  追いかけ続けていたいよ

UVERworld ”CHANCE!”

全ては、デビュー間もなかった《あの日》の続きであり、さらにいえば、バンド結成以降の全ての日々が、この日産スタジアムへと繋がっている。昨日、今日の努力で掴み取った成功なんかじゃない。懸命に、愚直に、そして、コロナ禍という未曾有の事態の中においても決して止まらずに走り続けてきたからこそ、ついに叶えることができた一つの大きな《夢》。それは、メンバー6人だけではなく、彼らを信じ共に走り続けてきたリスナー全員で掴んだ《夢》でもある。その壮大な眩い光景は、言葉を失うほどに美しいものであった。

その後も怒涛のハイライトが続いていく。TAKUYA∞自身のパーソナルな想いの深さ故に「最初で最後」の披露となった"モノクローム ~気付けなかったdevotion~"。BE:FIRSTのSHUNTOを迎え、しなやかでありながら強靭なマイクリレーを届けた「ENCORE AGAIN (feat. SHUNTO from BE:FIRST)」。この日だからこその特別なパフォーマンスが続き、そして、"ビタースウィート"や"Don't Think.Sing"をはじめとした最新アルバム『ENIGMASIS』の楽曲たちも次々と放たれていく。

そして、新旧のナンバーを繋いだ「全力のセットリスト」は、フィナーレに向けてさらなる勢いを見せる。灼熱の炎の中で、TAKUYA∞が我を忘れるほどの絶唱を響かせた"Touch off"。今のUVERworldにとって一番大切な曲"EN"。そしてTAKUYA∞は、"THEORY"で力強くこう歌い上げる。

僕らの  この人生は僕らだけのもの
でも  このバンドは君の人生でもあるんだね

UVERworld "THEORY"

今やUVERworldは、数え切れないリスナーにとっての人生の一部、そして、夢になっている。TAKUYA∞いわく、「いつかUVERworldと一緒に仕事がしたい」「UVERworldの音楽活動に携わる仕事がしたい」というリスナーは本当にたくさんいるという。もはやその関係性は、単なる「バンド」と「リスナー」という言葉では言い表せないもので、今や6人は、あまりにも大きな、数多くの大切なものを背負いながら走り続けているといえる。この曲を歌う前に、TAKUYA∞が「俺たちはバンドをやめることはない」と宣言していたように、今やUVERworldは、《君の人生でもある》からこそ、彼らはこれからも決してその歩みを止めることなく、僕たち・私たちと共に次の到達点へ向けて走り続けていくのだろう。今回の日産スタジアムは、これからも続いていく長いキャリアにおける一つの偉大な通過点に過ぎない。そう改めて確信させてくれた同曲のパフォーマンスは、あの場に集った全員にとっての果てしない希望となったはずだ。

ラストは、"MONDO PIECE"で大団円。最後にTAKUYA∞は、「全てを出し尽くした。」「初の日産スタジアム、心の底から笑顔で言えるよ。やり切りました。本当にありがとう。」と万感の想いを告げた。バンド史上初の日産スタジアム公演、これまで幾度となく更新し続けてきた最高をさらに上回っていくような、UVERworldの歴史的最高の一夜となった。


2日目、7月30日。史上最大規模の男性限定ライブ「男祭り」。UVERworldの「男祭り」の歴史について振り返ると、遡ること2010年、彼らは自身初の東京ドーム公演を成功させるが、TAKUYA∞の言葉を借りるなら、当時「UVERworldのファンは98%が女性」だったという。その時点で既に、セールス/ライブ動員において圧倒的な結果を叩き出していたが、それでも彼らは、「同性のリスナーにUVERworldの音楽を届けることができていない」という事実から目を逸らすことができなかった。そして、「自分たちが憧れていた男性アーティストやバンドには、同じだけかっこいい男のファンがいた」という考えのもと、翌年2011年から「男祭り」を始めた。200人規模のライブハウスから始まった「男祭り」は、Zepp Divercity公演で500枚のチケットを売り残すという苦い経験を重ねながらも、徐々にそのスケールを拡大し続けていった。2013年には日本武道館、2015年には横浜アリーナ、2017年にはさいたまスーパーアリーナで「男祭り」を敢行し、そして2019年の東京ドーム公演をもって、この「男祭り」はファイナルを迎えたはずだった。しかし、長きにわたるコロナ禍を経て、今回さらにスケールを拡大して日産スタジアム公演が行われる運びとなった。

TAKUYA∞は、東京ドームの「男祭り」の終盤のMCで、「男たちにそっぽ向かれてるのが悔しくて、そこに固執してしまっていた自分がいて、でも、その呪いがしっかりと解けました、ありがとう。」と語っていた。あの時に一度は完結したはずの「男祭り」が、今回復活したのはなぜなのだろうか。今回のライブのMCにおいて、彼はその理由について、やりたいと思ってもできないことがたくさんあるにもかかわらず、やろうと思えばできることに対して、「やる or やらない」と考えることをちっぽけに感じたと語った上で、「ただやりたいからやるだけ」と力強く告げた。なんてシンプルで、そして信頼できる理由なのだろう。当初の「男祭り」は、同性のリスナーに認められたいという6人自身の想いから始まったが、きっと今の彼らにとっての「男祭り」にそこまで深い意図はなく、来年の「女祭り」同様に、「ただやりたいからやるだけ」なのだ。結果的に、今回の日産スタジアムを舞台とした「男祭り」には、東京ドーム公演の45,000人を遥かに超える70,000人の男たちが集まった。この規模の男性限定ライブは広い世界を見渡しても前例がなく、ライブが始まる前からこの公演が歴史的なものになることは確定していた。

前日のライブを経たこともあり、6人は序盤から、広大な日産スタジアムの大舞台を、まるで自分たちのホームであるライブハウスのように見事に制圧していた。全てのエネルギーを絞り尽くすように歌い、咆哮するTAKUYA∞。彼は、今回のライブは「どっちが魂を震わせて歌えるか」「どっちが最後までこの情熱でここで立ってられるか」の勝負であることを伝え、その上で「まだまだ足りねえよ」「この中で俺と同じテンションで最後までブチ上がれる奴どれだけいんだよ?」「おめえか、おめえなのか?」と、序盤から沸々と熱し切ったフロアを全力で煽り続ける。そして、70,000人の同志たちによる怒号のような歓声、お互いの魂をぶつけ合うような激烈なコール&レスポンスと壮大な大合唱が次々と巻き起こっていく。6人は、そうした壮絶なエネルギーを真正面から受け止めながら、熾烈さと洗練さの両方を兼ね備えた至極のパフォーマンスで同志たちの想いに力強く応えていく。容赦なく野性を解き放ちながらも、同時に、あらゆる感覚をクールに冴え渡らせたかのような覚醒感を放つ6人。その姿は、完全にゾーンに突入しているかのようだった。

"Don't Think.Feel"、"Fight For Liberty"、"WE ARE GO"をはじめとした同志との絆を確かめ合う熱き闘魂歌の数々。そして、"FINALIST (feat. ANARCHY)"では、ANARCHYをステージに迎えて揺るがぬ生き様を刻んだ渾身のリリックを次々と畳み掛け、"来鳥江 (feat. 山田孝之 & 愛笑む)"では、TAKUYA∞、山田孝之、愛笑むのトリプルボーカルによる劇的なマイクリレーが展開されていく。また、東京ドームの「男祭り」においても一つの輝かしいハイライトを担った初期曲"激動"が今回も披露された一幕も忘れられない。このように、胸が熱くなった瞬間の数々を挙げていくとキリがなくなってしまうが、特に感動的だったのは、2012年にリリースされた"REVERSI"だ。

どうしても僕を認めたくない全ての人に
心から感謝を捧げるよ
敵も味方も  その存在に平等に価値を感じる
でも白黒つけようか

基本のオセロの勝ち方を教えてやるよ
序盤は相手に多く取らせるのさ
負けて始まる  そこからが本当の勝負
最後は大胆に返してやろうぜ

UVERworld "REVERSI"

この言葉は、リリースされた当初は、UVERworldの音楽を認めない人々に対する宣戦布告として響いていたが、それから約10年の月日が経ち、今ではこの楽曲は、自分たちの完全勝利を鮮やかに告げるナンバーとなった。そして言うまでもなく、その勝利はメンバー6人だけで掴み取ったものではなく、それぞれのタイミングで彼らの音楽と出会い、共に歩み続けるリスナー全員と手にしたものである。この楽曲が、70,000人の男たちが埋め尽くす日産スタジアムで轟いたことの意義はあまりにも深く、会場全体から巻き起こる爆発的なシンガロングと相まって、かつてないほどの破格の感動が押し寄せてきた。

魂を燃やしながら、終盤に向けてさらなるピークを目指し続ける6人と70,000人の男たち。ギアをさらに何段階も上げて"Touch Off"を絶唱したTAKUYA∞は、「まだ立ってるぞ」「まだ声も出るぞ」と、己の限界はまだ先にあることを伝えた。そして次に披露された"IMPACT"で、この日一番の、いや、これまでの全てのライブの中で一番の熱狂の彼方へとフロアを導いていく。そして、フロアから大合唱を超えた大絶唱が轟き、観客の一斉ジャンプによって地響きのような揺れが巻き起こる。この日、何度も超えたはずの限界を、さらに全員の力で超越していく。その狂騒感、一体感たるや。間違いなく、過去最高を更新した壮絶なアクトであった。約10年前、ライブハウスの「男祭り」でチケットを売り残した時には、決して誰も想像できなかったであろう景色。それを奇跡と呼ぶのは簡単かもしれないけれど、これは起きるべくして起きた奇跡なのだと思う。一人ひとりのリスナーとの出会いを重ね、連帯を深め、そして、そうした繋がり合いのスケールを誠実に拡大し続けてきたからこそ、ついに起こすことができた明確な必然に基づく奇跡だ。こんな奇跡を起こせるバンドは、UVERworldの他にいない。

ラストは、70,000人の観客が肩を組みながら大合唱した"MONDO PIECE"で、今回の史上最大規模の「男祭り」は、熱烈なフィナーレを迎えた。TAKUYA∞は、ライブが終わった日の夜、Instagramのストーリーズに、「日産スタジアム  7万人の男祭り  本当に人生で1番のライブが出来た。」「これ以上のライブ観たことないし  自分でさえ今すぐ超えられそうにもない」「しかし  このライブ超える為の人生じゃ無きゃ意味がない」と投稿していた。その言葉が全てで、今回の日産スタジアム公演2デイズは、UVERworldにとって、そして、僕たち・私たちにとっての一つの偉大な通過点に過ぎないのだと思う。この先、いったいどのような前人未到の景色を切り開いていくのか。今はまだ想像することもできないけれど、きっと、どのような想像さえも超越していけるはずだ。繰り返しにはなるが、そんな奇跡のようなことを成し得るバンドは、やはりUVERworldの他にいないのだと思う。







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