山形で芋煮を食べたことはないし、身内にも友人にも山形県出身者はいない。巨大なクレーンでかき混ぜられる超デカ鍋の中で煮えたぎる芋煮を、テレビニュースで見たことは何度もある。
「芋煮を食べたい」という夫のリクエストで作ったのが15年以上前、それは|所謂《いわゆる》山形内陸部で食べられているらしい牛肉で作る醤油味の芋煮で、中々の出来栄えで、以来秋から初冬、里芋が美味しくなるころのうちの定番料理となる。
やはりそのころ、東北大出身のドクターから材料などを教えてもらって作り始めた仙台芋煮も我が家の寒い時期の一品。
こちらは具沢山で豚肉が入る、味噌味の芋煮。
どちらも甲乙付け難い。
里芋が美味しくなるころ、芋煮で一汁五菜のお昼ご飯。
この時期だからこそ使いたいのがもってのほか。
山形県鶴岡市の|知軒憩《ちけいけん》で
「もってのほかです」
と出された食用菊の酢の物を見て思わず聞き返した。
「えっ?もってのほか?どうしてそう呼ぶのですか?」
「菊は天皇家の紋章だから、その菊を食べるんだもの、もってのほかでしょ」
と教えてくださった。
山形という土地を、奥ゆかしくて、純朴で、それでいて|強《したた》かだなと思った。
牛肉の芋煮には水出し昆布だし。
牛肉って昆布と相性がいいと実感しているから、私はこれ一択。
名前を知らない紅い小菊が、律儀に毎年11月になると咲き始めるから、|数珠珊瑚《じゅずさんご》といっしょに生ける。
これも11月限定の花遊び。
芋煮は朝、作っておいたから、五菜をぱぱっと作ればいいだけ。
想像通りのバランスのよい献立に、ふふふと自己満足。
それから一番大事なのは、最高の調味料は時間だということ!
作りたてより時間を置いたほうが数倍おいしくなります!
冷めたら、翌日の分は冷蔵庫に入る大きさの鍋か保存容器に移し替えて、冷蔵庫で保存。
冬でも冷蔵保存が原則。
日を置いて、東北大出身ドクター直伝芋煮で一汁五菜。
もってのほかはさっと茹でて冷凍していたものを酢の物に、大皿に五菜を盛ってワンプレートランチに。
作ってすぐより半日置いた芋煮が、やっぱり|美味《うま》い!
晩夏に仕込んだ麹きょうだいが、いい感じに熟成。
昨年からハンドブレンダーで塩麴も醤油麹も、唐辛子麹(三升漬け)も、ペースト状にしています。
なめらかで料理の下拵えにも使いやすいんですよね。
温かい汁物や鍋で、来たる冬もポカポカごはん。
風邪知らずでいたいものです。
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