『MOTHER2』ファン必見! 渋谷PARCOで明かされる開発の裏側

2024-09-02 のーどみたかひろ

渋谷PARCO 8階の「ほぼ日曜日」では現在、「『MOTHER2』のひみつ」をやっています。9/8(日)まで。

この展示は、ほぼ日さんの倉庫に眠っていた段ボールを『MOTHER2』30周年に際して、開けたことがきっかけで生まれたそうです。

こちらがその段ボールの中にいたファイルたちですね。展示会場の入り口のケースにありました。開けてくれてありがとう。

私は、広くない展示会場に、1時間半ほど滞在しました。

以下に、その内容をいくつか紹介しますが、糸井さんの手書きメモ、議事録内容など、絶対、直接見たほうがいいものばかりです!

★みどころ★

  • 糸井さんが考えたゲーム世界のイメージ、初期設定案(ギーグが持つ戦略、プロローグ案)【入って左手エリア】

  • 糸井さんがゲーム開発でメンバーに共有した考え方【入って左手エリア】

  • ゲーム各所のアイデア(表現、実装方法)【最初の部屋の真ん中の柱、右最奥】

  • ゲーム完成直前にゲームの品質を上げるための改善リスト【2つ目の部屋】

  • 細かいこだわり(キャラクターのスペル、マンガ的表現の適用)【最初の部屋の中央奥】

  • ボツ含む設定案(一部の街・キャラクターの設定、ゲーム主題の曲の歌詞など)【最初の部屋・2つ目の部屋】

■糸井さんが考えたゲーム世界のイメージ、初期設定案(ギーグが持つ戦略、プロローグ案)【入って左手エリア】


現実世界の地理をイメージした糸井さん設定メモの展示、一度でも『MOTHER2』で遊んだことのある人なら大興奮のはずです。入り口すぐ左手のエリアは、なかなか離れられないエリアでした。

現実的にあの土地をイメージしてるから、移動が歩行じゃないのね。など、が理解できます。

同じ壁にある「ギーグの戦略」メモを見て初めて、ギーグの思惑を理解できました。ギーグの考えるある未来に対してネスたちが邪魔になるから、芽のうちに摘んでおけ! というのが、ギーグの振る舞いでしたね。

また、最初のプロローグ案もおもしろい。実装されたプロローグとは違うけど、あの演出は生きてる!

■糸井さんがゲーム開発でメンバーに共有した考え方【入って左手エリア】

1時間半のうち、20分くらいはここにいました。

ちょっとだけ、感じ入った点を書き出します。ゲーム開発にあたって、メンバーに共有した基本的な開発方針です。

・キャラクターは一人一人、血が通っていて、人生を背負っている。それがプレイヤーに伝わらないなら、「MOTHER2」を作る意味がない!
・プレイヤーの頭を時々ひっぱたくようなことをいくつ考えつけるか?
・しっかり憎らしいやつを登場させる。そして、そいつさえ愛せるように作ろう

「ぼくらは天才ではないかもしれないが天才的なゲームはつくれる」という宣言がありました。実際に、天才的なゲームでしたよね。メモや議事録を読めば、糸井さんはじめ、作り手たちが天才だと思えます。この宣言は見事に達成できたんじゃないでしょうか? もっとストレートに感情に訴える書き方もされているので、ぜひ会場で見てください。

■ゲーム各所のアイデア(表現、実装方法)【最初の部屋の真ん中の柱、右最奥】

「ム」の修行、「耳をそぐ」で音楽が消えて、「目をつぶす」で、画面が暗くなるってのがいいですよね。あと、ワープの助走ってのもいい表現。

ドラクエみたいな当時のメジャーなRPGしかやったことない人にも無理なく受け入れられる範囲の工夫、という加減がいいですよね。あと、アメリカ市場を意識されていたのもすごい。

地底大陸の実装については、現在、ほぼ日で連載中の記事にも、どうしてああいう表現になったか、書いてあります。

■ゲーム完成直前にゲームの品質を上げるための改善リスト【2つ目の部屋】

ゲーム進行を間違えないようにわかりやすく改善、ゲームがバグらないように、誤操作防止するための措置が多いですが、よりおもしろくするための工夫もありました。これが、リリース三か月前、四か月前の改善リストでした。今なら完全ブラックな案件ですね。

・待ち時間を待たせないように、セリフの調整と実際の経過時間の調整
・進行理由でセリフの追加
・〜するまで○○が動かないように修正する
・ムの修行中のダメージ表示
・〜なガードマンの配置
・渋滞のため、車の台数増やす
・すぐ会える場所にいるのに、電話で話すのおかしい。電話いらなくない?
など

もっと没入させる仕組みとして、「ツーソンの街」の改善テーマに「ポーラをもっと魅力的にする」という紙がありました。なるほど、ただのキャラクターじゃ没入できませんよね? 「助けると街の人が褒めてくれる」って改善案がとてもすばらしい。

■細かいこだわり(キャラクターのスペル、マンガ的表現の適用)【最初の部屋の奥】

大山功一さんのマンガ的な表現がよかったですね
「!」「Zzz」「汗💦」(ハッって気づくやつ)、スカイウォーカーの影、音符、ゴミ箱の上のハエ、カップの湯気、キャラクターの上に乗ったたった一つのアイコンで、キャラクターたちの気分まで、伝わりましたよね。

■ボツ含む設定案(一部の街・キャラクターの設定、ゲーム主題の曲の歌詞など)【最初の部屋・2つ目の部屋】

ラストバトルのミーティング議事録は、読むだけで、脳内で再現できて、議事録だけで泣けます。

ゲームでは使われなかったゲーム主題曲(『SMILES & TEARS』)の歌詞だけ見ても泣けます。世界観を表して、かつ、その世界を体験した人が感動するような詩でした。

その他

他にも、メモリ消費を減らすための「マップレイアウト管理表」もおもしろかったし、ゲーム開始まもなくの糸井さん直筆のセリフも見るべき展示でしょう(糸井さんは途中から、しゃべったことを記録してもらう方式に変更)

セリフの作り方については、こちらの記事にもその経緯が載ってます。

会場に流れるBGMもつい、体が揺れてしまいます。もうしょうがないです。

感想

『MOTHER2』をやったことあれば、展示を見れば、絶対に鮮明に思い出せますし、心が熱くなります。またゲームじゃなくても、消費者に向けた作品を作る人にとって、作り手として、強い刺激を受けると思います。勇気づけられる、という感じでは決してないです。私は、(俺にここまでできるのか? こだわれるのか?)という気持ちが生まれて、一度、萎えました。が、やっぱりこんなものが作れたら、作り手として素晴らしいな、と萎えが消えて、やるぞー! という気持ちが立ち上がるまで会場にい続けました。

一度入場すれば、会期中、何度も入場できるそう(混雑時を除く)なので、なんとか会期中、もう一度、伺いたいところ。皆さんもぜひ、足を運んでください。絶対、直接見たほうがいいです。

簡単なことじゃないことは承知の上で、こんな完成度の高い、感動できる、後を引く作品を作りたい。


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