税込8,980円のレンジファインダー機(前編)

2024-09-03 会社員とカメラ

我が家では、ライカMDaの不在が続いている。今年6月にメンテナンスへお預けし、9月中には帰ってくる予定だ。しかし、この不在の期間にも“誘惑”や“物欲”というものはやってくる。最初の揺らぎは通称“バルナック”であった。こちらもライカのフィルムカメラであり、設計者のオスカー・バルナックの名前から・・・という話は広大なインターネッツに山ほど転がっているため割愛としたい。所謂“M型(Mシステム)”が登場するまでの主力商品だ。もう1つの揺らぎは、初代Mシステムの“M3”である。こちらは特定の年代の個体を探しているのだが、なかなか良品が出てこない。時に愛は2人を試してる(GLAY『誘惑』より)は尽きない中、“grainydays”の動画であるカメラの存在を知る。


オリンパス XA

“オリンパス XA”というフィルムカメラである。オリンパスのページを見ると、発売は1979年5月で価格は32,800円だったらしい。手のひらに収まるコンパクトフィルムカメラだが、まさかのレンジファインダー機である。ライカと同様に、小さなレバーを使い二重像を合致させてピントを合わせることが可能だ。ちなみに1980年にはXA2が発売され、XA4までのシリーズとなっている。それでもレンジファインダー機はこの初代のみで、以降はゾーンフォーカスなどが採用された。本カメラの開発設計はオリンパスペンを生み出した米谷美久(まいたによしひさ)さんとのことで、海外の写真家にも人気があるようだ。レンズは焦点距離35mm、F2.8のFズイコー搭載でとてもスナップ向きだと思う。

レンジファインダーの不在はレンジファインダーで埋めたい!と思っていた私ことアラサー会社員にはぴったりだった。とりあえず、常に監視している(概念)あのページやそのページで中古品を探す。だがそう簡単に見つかるわけもなく、最終的に辿り着いたのは某フリマアプリだった。MDaでの成功例?があるので以前ほど抵抗はない。ただ、“ジャンク品”と記載されている個体が多い割に具体的な内容や写真の掲載がなかったりする。どのような理由からの出品かは分からないが「かつて家族が使っていたもの」などもありそう。ゆえにコメントで詳しく伺っても分からないだろうと判断して、ある程度のことは諦めた。最終的に絞ったのは税込8,980円のジャンク品。悩んだ末にボタンを押す。

OLYMPUS XA(表)
OLYMPUS XA(裏)

カプセルカメラXA:シリーズ別:オリンパス オリンパス 技術・デザイン:シリーズ別:カプセルカメラXAのページです。 www.olympus.co.jp

産声

2日ほど経過して個包が届く。中身はもちろんXAで、恐る恐る封を開けると黒いプラスチック筐体が現れた。素材を知ってどれほどチープな雰囲気のカメラなのかと思っていたが(失礼)、実物は意外とそうでもない。小さいわりに質量はズンっとくるものがあり、後日友人に見せびらかした際も同様の反応を得ている。傷はそれなりにあるが、その点はどうでも良い。XAは絞り優先AEで、SR44というボタン電池を2つ使う。早速新しい電池を入れて、ボディ下にあるレバーを“CHECK”という項目に合わせる。すると、「ピー!」という音と共に全面の赤いランプが光った。XAはこの方式で正常に電源が入ることと、電池残量の確認をすることが出来るらしい。私にとっては産声のように聞こえた。

電源は問題ない。続いてはバリアと呼べれるカバーをスライドさせて、レンズ部分を見る。XAのシャッターボタンは“押す”というよりも“触れる”感じで切れてしまう。そのため慣れていないとミスショットが増えるのだが、このバリアをスライドさせない(レンズを出さない)限りフィルムが巻かれていてもシャッターは動作しない。ざっと見た感じ、レンズには傷がなさそう。次にファインダーを覗いて驚いた。確かにライカと同じような二重像の面が中心に見える。しかしこれがとても薄く、体調によっては分からないぐらいシビアだ。これはジャンクというか経年劣化なのかなと思う。別の出品者のコメントに「二重像が出てこない」とあったが、本人が見えていない可能性さえありそう。

小さくて可愛いフォーカスレバー
“CHECK”するまでドキドキ
ファインダーを覗いた感じ / 左側にシャッタースピードと指針が表示されている /
よく見ると“bis”のiとsが合致していないのが分かる

モルトが無ければ・・・

「距離計がイカれてたらパンフォーカスで使えば良いや」と考えていた。なので、何となくでもピントが合わせられるだけラッキーだ。最後に裏蓋(フィルム室)を開ける。目に入ったのは、ボロボロに分解されたモルト(モルトプレン)。かつて貼ってあった箇所さえも判別できないレベル。さすがに動揺したが、その2日後から始まる京都旅行へ持って行きたかった。それには、まず正常に撮れるか否かを確認しなければならなかったのでイルフォードのXP2 SUPERを詰めて裏蓋の上からマスキングテープを貼る。この愚行が作用するかどうかよりも、とりあえずの気持ちとして。そうして都会へ出て、撮り切ったフィルムは即日仕上げで現像へ。その結果、どうやら光線漏れなどはない。

とりあえず安心だ。でも、遅かれ早かれモルト交換は必要だと感じた。効果があるかも分からないマスキングテープ貼りも面倒である。旅行後にカメラ屋さんへ依頼しようかと考えていた矢先、驚くべきものが検索でヒットした。それは“XA,XA2用裏蓋モルト貼り替えキット”だ。「モルトの神よ、ありがとう!」と即刻注文したのは綴るまでもない。自分で切り出す必要がなく、カットされたモルトをそれぞれの箇所に貼れば良いだけ。そして、1シートで3台分が入っているため僅かな失敗はカバー出来るわけだ。問題はモルトが届いてから旅行までに貼り替える時間がない。そういう訳で、私はXAとモルトキットを持って新幹線へ飛び乗った。これが後に“モルト貼り替えの変”へと繋がる。

ザ・愚行
ジャンクすぎぃ!
モルトキット神
View this post on Instagram

A post shared by ぴんぼけ写真展 | Pinbokeh Exhibition (@ys_pinbokeh)

(つづくはず)


Anchor LLC Olympus XA,XA2用裏蓋モルト貼り替えキット 黒 amzn.asia 900円 (2024年09月02日 22:13時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する

これまで

付録(ILFORD XP2 SUPER 400)

鄭重声明:本文の著作権は原作者に帰属します。記事の転載は情報の伝達のみを目的としており、投資の助言を構成するものではありません。もし侵害行為があれば、すぐにご連絡ください。修正または削除いたします。ありがとうございます。
      SiteMap   サイト概要