本の物々交換ができる書店「ブックカフェ はるや」に行ってきた話

2024-09-02 森潤也|文芸編集者

本屋さんって面白いんです。

何を今さらという感じですが、小規模の書店や個人書店などが増えて、本屋さんのバリエーションがすごく広がっています。
選書のオリジナリティだけでなく、コンセプトやお店作りから従来の本屋さんの枠を飛び越えているところもあって、本屋さんという存在の可能性がぐんぐん拡張されているように感じます。

それなのに。
思えば、行くのは通勤途中にある大型チェーンばかり。
仕事の新刊チェックとして売り場を眺めるだけで、「本屋さん」という場所にあまり向き合えていなかった気がします。

本屋さんが減っている今こそ、いろんな本屋さんに行くべきではないか。
いろんな本を買って、いろんな人と話して、いろんなことを考えて。
そして、「本屋さんって楽しいよ!」と発信しよう。

そんな当たり前のことを、今年はちゃんとやろうと決意したのでした。

というわけではじめた、「おもしろい本屋さんに行こう」企画
モリが訪れた本屋さんを、誰に頼まれてもないのに勝手に紹介していくコーナーです

今回のお店は、「ブックカフェ はるや」さん
なんと、本の物々交換ができる本屋さんなのです。
(★写真撮影、SNS公開の許可はいただいております)

※※※

今回ご紹介するお店
ブックカフェはるや 喫茶と本とちょっと酒」

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▼(Xアカウント)
https://twitter.com/kohiyamaso


横浜に出かける際は、東急東横線をよく使います。
急行に乗ってビュンと行きがちですが、途中には情緒あふれる駅がたくさんあるので、たまには各駅停車で寄り道するのもオツなもの。
そんなぶらり下車をしたくなる駅の一つが白楽です。
横浜駅の3駅手前。レトロな商店が並ぶ「六角橋商店街」をはじめ、懐かしい空気が漂う街で、神奈川大学のおひざ元なので学生たちの活気にもあふれています。

といった白楽駅から徒歩1~2分にあるのが、「ブックカフェはるや 喫茶と本とちょっと酒」さんです。
東口を出てすぐ。目印は白い建物。
階段に敷かれた緑の芝に、紺に染められた「OPEN」という暖簾?(味があるのもまた良い)、青空のような色の扉。
迎えてくれる光景で、はやくもテンションが上がります。

敷かれた芝の踏みごこちが気持ちいい
楽しくなる入口

お店はこじんまりしていますが、大きな窓の解放感もあって、とても広々と感じます。
入口手前側に本棚がいくつか並び、奥はテーブルと椅子のカフェスペースです。

入口から見える店内

左の壁がメインの本棚で、小説からエッセイ・実用書など幅広いラインナップが並んでいます。
棚のブロックごとにテーマが分かれており、棚プレートで示されてはいないものの、「あ、ここはこういうテーマなんだな」とにんまりしたり。

メインの本棚。棚の木材の色が明るくて好きです

本がテーマ別でまとめられていること自体は珍しくありませんが、長い棚をプレートなどで区切っている本屋さんがほとんどです。
こうしてブロックで分けられているのは新鮮で、ちょっとした違いなのにぐっと見え方が違って驚きました。そのブロックに集中できるというか、ブロックごとにパッパッと景色が切り替わるというか。一棚書店に来ているような面白さがありますね。

これは植物ゾーン
これは猫のゾーン。テーマの中でもいろんなジャンルの本があります
百万年書房さんの本も揃っている!

並んでいるのは新刊本がメインですが、ときおり古本がひょっこりあらわれます。
これらは棚貸しの場所で、棚を借りているお客さんが置かれている本なのだとか。こういう風に新刊と古本が混じっているのも、楽しさがあっていいですよね。
出版社視点では本=新刊として扱いがちですが、読者からしたらそんなこと関係ないはず。新刊も古本も同時に選べる選択肢を増やすことが、本がもっと身近になることに繋がる気もします。
まあ、古本は利益が作り手たちに還元されないのが課題なんですが、その話はまた別の機会に……。

棚貸しの古本コーナー。この詩集気になります。

歩いていて目を引かれたのが、「物々交換コーナー」です。
持ってきた本を入れると、置かれている本を持って帰っていい棚。
顔も名前も知らない誰かと本を交換するのはロマンがあるし、新しい本との出会いにもつながりますよね。
読み終わったらまた交換しに行こう、と次の来店きっかけにもなります。
ただの素敵な本屋さんというだけでなく、「場」として楽しめる仕掛けがたくさんあって、この空間自体が好きになるお店だなあと感じました。

個人本を持ってきていなくて交換できなかった。次回は必ず!

壁の本棚以外にも、本が置かれている場所はあります。
お店中央の島と入り口右側の本棚には、絵本やZINEなどがいろいろ。

中央の島
右側の大型本エリア
このタイムスリップノンフィクションZINEが気になる……

話題書から人文、古本にZINE。いろんな本好きに刺さる本が幅広く取り揃えていますが、本の数が多いわけではありません。
でも、僕はその数がちょうどよかったんです。

本屋さんって本がたくさんあるじゃないですか(当たり前ですが)。だから店内の棚をすべて見ることはなかなかできません。時間の制限もあるし、興味があるジャンルの棚を見て、あとはぶらぶらして帰ることがだいたいです。
でも「はるや」さんは本の数が多すぎないので、限られた時間の中でも店内の棚をぜんぶ見れるんですよね。
そうすると普段読まないジャンルでも「あれ、気になる」という本が目に入ったりして、自分の興味の幅が広がっていきます。
本が多すぎると「どれを選べばいいかわからない」と感じることもありますが、そういった不安が生まれず、じっくり悩みじっくり選ぶこともできます。

選択肢がたくさんあることが、必ずしも正解ではない。

そんな発見をもらえた本屋さんでした。

(※たくさん本がそろっている本屋さんはもちろん大好きですし、そもそもビジネスモデルが違います。どちらが良いという話ではなく、住み分けや役割の違いということをご理解ください)

ちなみに「ブックカフェはるや 喫茶と本とちょっと酒」さんは、その名の通り飲食も提供されています。
コーヒーやお酒が飲めるほか、土日はランチ提供も。
窓から見える景色が気持ちよくて、陽光を浴びながらコーヒー片手に読書するのにうってつけです。
カフェだけ利用の方も多いそうなので、白楽駅近くでちょっと一休みしたい人にもおすすめです。

2階なので眺めもよいです

厳選された「多すぎない」本と、心地いいカフェスペース。遊び心のある物々交換棚に、芝の敷かれた階段。
オシャレさと懐かしさの同居した大人の秘密基地のような本屋さんで、帰り道に脳裏にふと浮かんだのは、スタジオジブリの『耳をすませば』に出てくるアンティークショップ「地球屋」でした。(わからない人はぜひ映画を観てください。ていうか観てない人なんていないよね!!)

「地球屋」を訪れた主人公・雫のように、きっと心がときめくこと間違いなしなので、横浜に行く際はぶらり途中下車して遊びに行ってみてください。

★★★


<おすすめ本>
防災イツモプロジェクト『
防災イツモマニュアル
この記事を書いている今も、台風がノロノロと日本列島を縦断していますが、もう最近災害が多すぎです。地震も怖いしゲリラ豪雨も多いし。
さすがに災害に備えておかないとちょっとヤバいなあという気持ちはありますが、なにをどう準備すればいいかわからないわけですよ。
そんな時にぴったりな本、あります。
災害に備えて、自宅に何を買っておけばいいのか。実際に災害が起きた時にどう行動すればいいのか。NGは何なのか。
それらが簡潔にまとまっている本です。中面もカラーのイラストベースなので、子供から大人までめちゃ分かりやすい。160ぺージなので分厚くなくて読みやすい笑
ほかの編集者が作った自社本なんですが、これはすごくわかりやすくていい本だなあと思ったので、イチ読者としておススメしておきます。

防災イツモマニュアル (ポプラ新書 264) amzn.to 1,045円 (2024年08月31日 11:41時点 詳しくはこちら) Amazon.co.jpで購入する


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